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学生インタビュー:水谷珠美さん(修士2年生)

#インタビュー

メディア表現学が網羅する領域は、芸術、デザイン、哲学、理工学、社会学など多岐にわたります。各自の専門領域の知識を生かしながら他分野への横断的な探究を進めるうえで、学生たちが選ぶ方法はさまざまです。入学前の活動や IAMAS に進学を決意した動機をはじめ、入学後、どのような関心を持ってプロジェクトでの協働に取り組み、学内外での活動をどのように展開し、研究を深めていったのかを本学の学生が語ります。

水谷珠美さん

世界への違和感をメディア技術で告発する

- IAMAS入学以前の活動と進学の動機について聞かせてください。

IAMASに来る前は、セントラルセントマーチンズというロンドン芸術大学のなかのカレッジにいて、Fine Art専攻で学部を卒業しました。卒業論文は、テクノロジーを用いた芸術表現の鑑賞体験や経験に焦点をあてたものでした。物事を抽象的により深く考えようとすると、英語では苦しかったこともあり、イギリスではなく日本の大学院に行こうと思いました。ロンドンでは、いろいろなことについて「『日本』だとどうなの?」と聞かれて答える場面があったのですが、私は小学校6年生からずっと東京だったので、自分が言う「日本」は結局、東京のことでしかないなといつも思っていました。それで、岐阜県にあるIAMASに興味を惹かれました。
最初にIAMASを知ったきっかけは、サウンドアート系の作品を調べていた時に知った作家の三原聡一郎さん(2006年卒業)です。進学のいちばんの理由はメディアアートへの関心でした。ロンドンで知り合った岐阜出身の画家の方にIAMASのことを聞いたら、在校生を紹介してくれました。ロフトを見学して在校生と話してみて、IAMASという環境を面白いと思った。それが私の判断基準でした。

- 入学してからのプロジェクトでの関心と、個人研究との関わりは?

今振り返れば、Archival Archetypingを選んだ理由のひとつに、岐阜おおがきビエンナーレへの参加があります。8月に起きたあいちトリエンナーレの「表現の不自由展?その後」のいわゆる炎上について、何か言わなくてはという気持ちが高まっていたこともあり、「メディア技術がもたらす公共圏」というテーマに反応して、《鑑賞者の技法》を制作しました。目を惹くイメージが切り取られて瞬時に流布する現在のメディア環境において、「不自由展」の鑑賞経験を語る複数人の音声アーカイブに接することで、各自が鑑賞のモードを省みる機会になると考えました。

- 《鑑賞者の技法》は、プロジェクトメンバーとの協働で取り組んだ作品ですが、実際にやってみてどのように感じましたか?

この作品は、鑑賞者がタブレット端末を操作して音声を聴取する作品ですが、停止ボタンはなく、ヘッドフォンを戻した時に音声が停止し、再生は常に冒頭からなされる仕組みになっています。センシング部分は武部瑠人くんに、音声を再生するアプリケーションは厚木麻耶さんにつくってもらいました。シンプルなインターフェイスになったおかげで、良い鑑賞体験をつくることができました。ただ、昨年友人たちと東京都美術館で展示した「都市のみる夢」(2020年)でもそうでしたが、協働で何かをやるという理想に対する難しさも学びました。やはり複数人で何かをやることにはそのよさと難しさ、両方ありますよね。

「都市のみる夢」展示風景

- 水谷さんの立場は、新しいデバイスをつくったり、新しい技術を使うことではなく、既存のメディアやそこにある意味を読み替えていくことだと気がついたという話がありましたね。

ある技術がなんのために生まれて、それがこれからどこへ向かおうとしているのかを批判的に見るには、この世界に違和感を感じ、その違和感を糸口に何事かを探求する執念が必要だと思います。修士論文でも参照した、ギー?ドゥボールの「スペクタクルの社会」が指摘するような、そのような世界に対する違和感みたいなものを、アートと関係のない普通の社会人だった以前の私は、ほとんど感知していなかったと思います。
仕事を通じて、例えば、「たくさん売れるものが正解」というような価値観になんとなく疑問や苦しさは感じるものの、それに抗うという発想はなく、広く資本主義が押し進める社会状況を自明のものと見做していました。修士作品では公共建築から感じ取った違和感を問い続けることで、そこに関わる人々の心性に廃墟性を見出したわけですが、その「人々」には何より自分自身も含まれています。社会の有り様に無抵抗だった自分がアートというテーブルの上でメディア技術の転用をツールに社会の何事かを告発しようとしている。これは面白いことだと自分では思っています。

インタビュー収録:2021年1月27日
聞き手:伊村靖子

 
※『IAMAS Interviews 01』のプロジェクトインタビュー2020に掲載された内容を転載しています。

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